「IPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略」(知財ランドスケープ 山内さん著)を読みました。
IPランドスケープで何ができるのかの具体例が豊富にまとめられ、かつ、初心者にとって理解しやすいものだと思います。
山内さんのIPランドスケープ関係の論文は、以前ブログで取り上げたバージョン3までありますが、その中のバージョン1となります。
仮説検証の積み上げが、将来予測の基礎となる
「要約」
特許マップから得られた気づきを仮説に変換する。
これを検証し、有用かつ確度の高い事象が知得。
その積み上げにより、信憑性や提言力が増大。
その結果を基礎とし、ビジネス視点での将来予測が可能となる。
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「感想」
初心者が陥ってしまうのが、取り合えずマップを作ってみて、でもそこから何も見出せなくて悩むということかなと。
始めに、ある程度こういうことを確認したいという目的があり、それだったらこんなマップで良いだろうと思って作る。
そして、本当にそのマップから確認でき、思ったとおりであれば、次に何を見ていきたいのか。
思った通りでなければ、ではどんなことが確認できたのか。
この繰り返しだと思います。
特許情報を起点とした有望用途開発
「要約」
自社技術を含む母集団を作成。
その出願人ランキングからベンチマーク企業を特定。
ベンチマーク企業の開発動向と、その対象の市場動向を確認。
ベンチマーク企業の製品の特徴を調査。
対象製品に対する自社の技術的優位点を、特許・非特許情報で特定。
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「感想」
マクロからミクロ、特許・非特許など、いろんな観点をきれいに織り交ぜているなと感心します。
実態は、一回の調査でストレートに結論に至ったのではなく、行ったり来たりしながらだったのだろうと推測します。
そうであったとしても、それこそが仮説検証であり、情報分析になくてはならない過程だと思います。
ニーズドリブンでの売り込み先の探索
「要約」
自社技術を含む母集団を作成。
出願プレーヤを、バリューチェーンの川上・川下で分類。
各企業の関連性を見出す。
自社材料の有望な売り込み先企業を特定。
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「感想」
特許情報を用いることで、各企業がどんな技術に興味があるのか、どんな技術課題に取り組んでいるのかを特定できます。
また発明者から、技術開発メンバの体制まで分かります。
そこまで調べてからその企業を訪問すると、商談も盛り上がるだろうと思います。
(まとめ)知財情報分析のストーリとして取り込める
私が初めてIPランドスケープのことを勉強したとき、分析ストーリとしてすっと理解できたのは、上記の「特許情報を起点とした有望用途開発」です。
当時の私は、マーケティング?有望用途?そんなこと事業部がすることでは?と思っていましたが、特許ってこんなこともできるのか、と驚きました。
今読み返すと、論文全体の内容について、そうだよなと実感を持って理解することができます。
つまり、本論文は、知財担当者がIPランドスケープを実践する上での留意点や考え方を、すごく実態に基づいて書かれていると思います。
これにより、IPランドスケープの活用パターンを自分の中に蓄積していくと良いと思います。
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