IPランドスケープの要点。企業知財部のプレゼンス向上のために。

論文「IP ランドスケープの基礎と現状」(乾 智彦 著)を読みました。
2018年の発行ですが、今現在もIPランドスケープに十分に取り組めている企業が少ない中、大いに参考にできると思います。

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IPランドスケープという知財業務に大きな可能性を感じる

「要約」
IPランドスケープの定義:「自社,競合他社,市場の研究開発,経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み,自社の市場ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望等を示すもの」
これによると、知財に関連する文言が個別特許等のみである。
知財情報を基礎としつつも、その他の情報・分析の占める割合が大きい。
そこから得られる将来の展望等を示すことが知財業務であると、明確に位置付けている。

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「感想」
つまり、従来の企業知財部のままでは到底できるものではなく、色んなスキルやマインド、活動を取り入れてこそ可能となります。
そうして、最終的に会社に貢献をしていくと。
会社における知財部を、より重要な位置づけに引き上げられるのではと思います。

IPランドスケープの基本フローは以下の4段階

「要約」
①知財状況の把握:自社他社のマクロミクロでの知財状況
②市場状況の付加:自社他社における市場状況を把握し、知財状況に付加
③分析・ビジュアル化:①②をもとに、市場ポジションや取りうる戦略をビジュアル化
④経営層への提示:③で作成された現在の俯瞰図、将来展望などを経営層に提示
※①②③は順序は定まられず、明確に切り分けられるものではない

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「感想」
最初に相手の部門からインプットや課題をもらった場合には、そこについて①知財状況を調べられますね。
そうではなくて、課題設定から知財部で行おうと思うと、まずは市場状況を調べるかなと思います。
④の経営層の提示がないものは、そもそもIPランドスケープとは呼べませんね。

知財部が特に強化すべきは、組織全体としての提案能力

「要約」
知財部において特に強化すべき能力は、提案する能力。
個人の提案力というよりも、部門全体としての提案力。
必要性・納得感のある情報内容やその発信力だけではない。
知財分析を経営企画に用いることが可能な環境とするための「組織の構築」。
継続的に実施し信頼を得るための「仕組みの構築」。

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「感想」
いくら知財担当者が頑張って情報分析して提言まで仕上げても、それを受けてくれる人がいないと全く意味がありません。
経営層がIPランドスケープへの理解がないまま、仮に提言を持って行っても、「これは何?」「なぜ知財がしているの?」となるのがオチです。
そのため、最初に、IPランドスケープをするということを経営層に知らしめることが必要になります。

(まとめ)IPランドスケープをするために、人も組織も変化が必要

IPランドスケープに取り組んでまもなくの頃、弁理士向けの機関紙「パテント」に本論文が掲載してあるのを見つけました。
そして、すぐに内容を読み込み、チームのメンバにも展開しました。

当時は初めたばかりの頃でしたので、組織としての提案力と言うところはよく分かっていませんでした。
実際に知財分析をして経営層に持っていくことを何度もしていく中で、徐々に継続的に出せる関係性を創ることができました。
正直、その関係になるまでが大変だったなと思います。

一朝一夕にできるものではなく、どれだけ粘り強く取り組めるかが大事だと思います。

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