『IPランドスケープの実践事例集』より、M&A先探索での仮説設定・検証の着眼点を学ぶ。

『IPランドスケープの実践事例集』(技術情報協会)を読みました。
その中で、知財ランドスケープ山内さんによるIPランドスケープの具体的事例が示されています。
各種分析によってゴールに導く過程の中で、特に仮説設定・検証の着眼点について大変勉強になったところを紹介します。

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大企業間M&A/アライアンスへのIPランドスケープの活用

「要約」
実際に起きた2008年の買収事例(測量大手トプコンがソキアを買収)を解析。
論点のゴール:①真に技術補完度に富む ②M&A活用による事業戦略が読み取れる

(ステップ1)母集団規定
1-1 トプコン、ソキア両企業の特許母集団を作成。
買収前の名義人であることに工夫が必要。

(ステップ2)マクロ分析[ポジション把握]
2-1 両社の出願件数比を確認し、全体俯瞰。
2-2 特許ポートフォリオ対比マップ(Fターム)
5J084AA05(光レーダ>距離)が、ソキアの強みと特定

(ステップ3)セミマクローセミミクロ分析[テーマ設定]
論点ゴール①真に技術補完度に富む に照らし、ソキアの強みを特定する。
3-1 ステップ2より、 5J084AA05(光レーダ>距離) がソキアの強みと見込んだが、調査レポートよりすでにトムソンの強みと紹介。技術の補完に矛盾する。

3-2 Fタームの階層を上位レベルにすることで、5J062(無線による位置決定) が、ソキアの強みをあぶり出せた。

3-3 5J062(無線による位置決定) の下位レベルで両社を比較し、 5J062DD22(衛星の選択) などで、補完関係を確認。

3-4 用途となる 5J062CC07(GPS)、5J062BB08(土木) については共通し、事業上の共通性も確認。


3-5 時系列推移で確認し、ソキアが先行し、トプコンが猛追の関係。
ソキアが基本特許を有し、トプコンにとってリスクとなっている。

(ステップ4)ミクロ分析[テーマ深堀]
セミミクロ分析で得られたソキアの強み技術の妥当性を検証
4-1 ソキアの外国出願
同技術を海外に出願しており、同社の重要技術であり、強みと肯定。
また、トプコンにおいても海外事業のウェイトが大きく、事業上重要な技術であることが肯定。
これにより、 論点ゴール①真に技術補完度に富む が検証された。

4-2 トプコンのIR情報
コア事業に同技術を活用することを記載。
ソキアとのM&Aがなかったら示せないものであり、事業戦略に織り込まれていた。
ソキアの基本特許を得ることで、事業を強化できる攻めとなった。
それ以前のトプコンでは侵害リスクあったためリスクヘッジ(守り)ともなる。
これにより、論点のゴール②M&A活用による事業戦略が読み取れる が検証された。

(感想)グラフ1つずつで、緻密な仮説設定と検証を行う

分析の手順の一つづつを詳しく見ていくことで、勉強になるところがたくさんありました。
強み技術の特定において、特許分類の階層レベルが大事なこと。
広く見る(上位レベル)、細かく見る(下位レベル)の両方が必要です。

・技術は異なるが、事業が共通していることを示す。
そのためにFタームの用途に関する箇所を確認する必要があります。

時系列推移から、特許の強さやリスクを推測。
先行するほど基本特許となり、同技術に後発する様子から侵害リスクと言える。

本書『IPランドスケープの実践事例集』には、このようなIPランドスケープ実践において勉強なるところがたくさんあり、追って紹介していきます。

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