「企業買収」(中央経済社)を読みました。
買い手、売り手の企業において、誰がどんなことを考えながらM&Aが進んでいくのか、小説として書かれており面白いです。
M&Aは実際に経験することは難しいので、実態を知るのに良い本です。
意中の相手には、数年かけて口説き落とすぐらいの根気が求められる
「要約」
戦略に合致した良い企業を買収したいなら、幅広い情報収集を行い、みずから積極的に仕掛けていく姿勢が必要である。
金融機関などに買収候補の情報提供を求める場合でも、具体的な希望先の特徴を伝える。
買い手は、M&A前に売り手との間で人的関係や取引関係など深い関係を築いておくことで、ウェットな取引へと持ち込むことが肝要。
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「感想」
買収したい相手企業が見つかった時、おそらく第三者の企業も興味を持っていますからね。
その相手と交渉して成就するには、やはり人間同士の関係になるのかなと思います。
そのために、いきなりM&Aの話ではなく、現在の事業での取引があって、そこから自社を知ってもらうことがスムーズなのかなと思います。
買収価格に、不確実性の高いシナジー効果は織り込まない
「要約」
もし、シナジー効果を織り込んだ価格で買収してしまうと、買い手はシナジー効果を実現しない限り、満額の投資回収をすることができない。
すると、結果として買収によって企業価値が毀損してしまう。
MAの失敗の多くは、高く買いすぎることにある。
そのため、買い手は、投資後の採算管理を厳密に行うことが肝要。
買収後のシナジーを見込んだ、業績目標の設定管理とフォローが必要となる。
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「感想」
シナジー効果があることは買収する理由にはなるが、それを買収価格にまで入れてはいけないんですね。
M&Aの失敗で、シナジー効果が想定ほど生み出せなかったとよく聞きますが、それは裏を返すと高く買い過ぎたと同じなんだなと。
あと、M&A自体は決して目的ではなく、双方の企業の成長のためなので、そのあとが大事になることはその通りだと思いました。
売り手企業の従業員は、大手企業の傘下に入ることに好意的
「要約」
ライバル会社による買収ではなければ、売り手企業の従業員は、一般的に、大手企業の傘下に入ることを好意的に受け取る。
ただし、強烈なアイデンティティがあるときは、傘下入りに対して反発がある。
売り手企業に派遣される買収側担当者は、社員のモチベーションをさげないよう、慎重な対応が必要となる。
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「感想」
確かに、売り手側の従業員にとって、自分の立場が保証されているのであれば、大企業に入ることに反対する理由はないですね。
福利厚生など充実してメリットの方が大きいかもしれません。
ただ、企業文化など目に見えないところがあるので、そこは社員がどのように感じているのか把握するため、従業員と対話などすることが大事だと思います。
(まとめ)M&Aの過程が生々しく実感できる本
特許情報分析やIPランドスケープにおいて、活用の一つにM&A候補企業を探索するというのがあります。
そこでの分析方法は理解しているのですが、実態として会社がM&Aを実行するというのはどのように進めるのかを、理解できていませんでした。そこで、本書を読むことにしました。
本書を読んで、M&Aにはどういった立場の人が関わるのか、それぞれどんな思いで臨むのか、買い手や売り手の担当者や社長はどんな気持ちなのか、がよく分かりました。
小説のようなストーリ形式で書かれており、楽しく読むことができました。
自分がM&Aそのものを進めることは難しいと思うのですが、何らかの形で関わることは面白いと思いました。
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