積水化学のIPランドスケープ。知財担当者は、組織の中でどう考え、どう動くべきか。

積水化学におけるIPランドスケープ実践の紹介です。
著者の梶間幹弘さんの経験をもとにした、活動事例や基本的な考え方が書かれています。
特に、組織内で取り組むうえでのポイントがとても勉強になります。

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IPランドスケープ活用事例。知財担当者による貢献

「要約」
(1)議論の促進
近年、開発部門にもビジネスモデルを意識した企画が求められる。
現在の用途すら模索している中、その先のビジネスまで検討することは困難。
そこで特許情報を用いた俯瞰、すなわちIPランドスケープによるレポートが求められる。

バリューチェーン全体の俯瞰、海外動向の分析、関連する新たなビジネスモデル、他社の事例等。
「こんな動きがあるならこういう可能性もあるのでは?」
「これが社外で起きているが自社にも関係がある」

といった気づきを与える。

(2)議論の深掘り
知財担当者は、発明を仕上げるために、新規性・進歩性の裏にある本質の問いかけをしてきた。
「どんな価値をどんな顧客に提供するのか」 「既存のものとの違いはなにか」
と問いかけてアイデアを練り上げていく。

その時に、特許・非特許情報を組み合わせた、先行事例の紹介や、想定顧客のその先の動きに関する情報を提供し、比較検討する。
それがアイデアの特長を際立たせることに有効に働く。

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「感想」
特許・非特許情報はファクトです。
ファクトをもとに示唆を積み上げていかなければなりません。
そのとき、ファクトについてどういう見方をするのか、上記が参考になります。

開発部門など相手部門にファクトを示す際にも使えますし、分析を行う知財担当者自身も仮説検証を繰り返す視点に使えると思います。

知財担当者は、明細書のフレームに慣れています。従来技術、課題、解決手段。
そのフレームで目の前のアイデアを整理すると、その本質をつかむことができると思います。

組織的な扱い:本質的にはリスクマネジメント

「要約」
IPランドスケープなどインテリジェンス業務の1つの側面に、敵の動きや社会変化の兆しを察知して打ち手を提言することがある。
その提言は重要だが、相手如何によってはレポートが活用されないことも多々ある

その背景には自身の実力不足もあるだろう。
また情報提供の相手やタイミングの調整によって、上記問題を解決する一助になる。 

組織の中で地道に情報収集し、提言を続けられるか。
取り組みを始める前に、本来自分がどうありたいか。
信念や覚悟を確認すべき。

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「感想」
レポートが活用されないことが多々あることは、実感しています。
時間をかけていろんな情報を収集・分析し、提案しても、パッとした反応がないことがあります。

確かにそのときは落ち込みます。
ですが、それから「ではどこが物足りないのか」を聞き出したり、また「別の人に説明したらどうなのか」という姿勢が大事だと思います。

自分たちの活動は絶対に意味がある、と信じることだと思います。

IPランドスケープの顧客ごとの違い

「要約」
(1)企画部門が相手の場合
課題の幅が広く、タイムリー、柔軟に協力していくことが求められる。
良き相談相手となり、ときんは背中を押す配慮が必要。 
そのために、密なコミュニケーション、信頼関係、そして、新規事業マネジメントやMOTの幅広い知識が必要。

(2)経営層が相手の場合
日々数多くの意思決定を行うため、せっかちになる特性がある。
また、従来の過去のみを語る特許マップでは「で?」と言われかねない。
求められるのは、自らの意思決定に役立てる端的な分かりやすい情報であり、すぐにアクションにつながる提言である。

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「感想」
いずれにおいても、タイムリーに対応していくことが大事ですね。
相手の取り組んでいる課題をつかみ、その解消のために必要な提言を、必要なタイミングに出していくこと。

そのために幅広い知識が必要です。企業経営や技術のことなど。
相手のアクションにつなげる提言ですので、当然と言えば当然ですね。

(まとめ)会社組織でのIPランドスケープ実践の心得

上記記事の著者は積水化学の梶間幹弘さんです。
色んな所でIPランドスケープの講演をされていると思います。

自身がIPランドスケープを実践される中で、特に会社という組織の中で苦労されていることをもとに書かれています。
私の体験と照らしても、「それよくある」と思うところや、「そういう考えですればよいのか」と勉強になるところもありました。

上記内容は、『IPランドスケープの実践事例集』(技術情報協会)に寄稿されたものです。

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