知的財産戦略とは、事業を強くする知財の創造、保護、活用

元キャノン丸島先生の「知的財産戦略」(ダイヤモンド社)を読みました。
企業における知財戦略とは何か、そのなかで知財部はどのように動くべきか、どんなスキルが必要か、体系的にまとめられています。
知財部に来てすぐに読みましたが、今読み返しても学ぶことが多いです。

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自社の部品を使って効果が出る装置まで、特許を取る

「要約」
部品を作っている中小企業は、特許出願して公開前に顧客に見せることがある。
それをみた顧客から改良要求が来て、改良して無事に納品。
しかし、その顧客に用途特許を全部登録されて、その部品は他の顧客に売れない。

問題は、自社は部品メーカと捉え、部品の特許しかとらなかったこと。
事業を強くするには、顧客の装置メーカからあやつられないようにする。
つまり、部品を使うことで効果が出る装置の特許、ユーザ視点で考えられる改良点の特許まで取る。

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「感想」
よく聞く失敗例ですね。
部品メーカは知財にあてられる予算が少ないので、自社技術のコアの部分だけで精一杯になるのかなと。

その部品を使う装置、あるいは、ユーザの利便性を考えて特許をとる視点は大事だと思います。
私の勤めている会社でも、まさに、顧客の使う場面を考えて特許をとることを考えています。
顧客にその特許をアピールし、「こんなサービスができるのは自社が特許を持っているからです、一緒にやりましょう」ということを考えています。

担当技術についての過去から現在までの特許公報を全部読む

「要約」
知財活動に必要とされる知識は、技術、知財法、語学。
技術について、過去から現在の特許公報をすべて読む。
読む観点は、①先行技術の理解、②発明を理解し、明細書に表現する、③権利として請求項に表現する。
これにより、技術を理解し、発明を権利として表現するスキルが身につく。

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「感想」
私自身、業務をしていて、技術の知識や理解が足りないことによく苦しみます。
その技術について、全部の特許を読まないといけないんですね。
確かにそれをすると、技術の変遷や現在のホットな技術など、よく理解できると思います。

研究テーマ開始時に、基本特許の有無をはっきりさせる

「要約」
その研究テーマに関し、すでに第三者の権利が存在していたら、それを解消しなければ事業につながる権利を形成できない。
このときの特許調査のレベルは、先行特許がどれくらいあるかを把握することであり、全件の精査は不要である。
しかし、その技術について基本特許の有無は、最初にはっきりさせなければならない。
基本特許の弱みを解消する知財戦略が必要となる。
基本特許は引用回数の多さから特定ができる。

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「感想」
自社でも研究テーマの上流段階で、他社の特許出願から技術動向を調べることがあります。
そのとき、何に注目して、何を特定するのか、悩むことがあります。

研究テーマの中身がまだ定まってない段階では、詳細な調査は無意味です。
なので、その対象業界での大まかな技術動向と、特許としては基本特許があるかがポイントであると、よく分かりました。

(まとめ)知財業務の広さと深さを知れた

本書を購入したのは、私がまだ知財部に転籍になった直後のころ、会社の人からこれは絶対に読むべきと勧められたからです。
著者は、元キャノンの丸島儀一先生であり、当時の私はそのすごさがよく分かっていませんでしたが。

本書を読んでみて、企業における知財部の業務範囲の広さ、関わる相手部門の多さ、業務においてこれという決まったパターンがないという難しさが、よく分かりました。
キャノンでの実際の特許の係争事例も書かれており、臨場感がありました。

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