昭和電工のIPランドスケープ。定着の要因は、長年の地道な活動があったこと。

昭和電工のIPランドスケープの取り組みを紹介します。
実践にあたり、IPランドスケープという言葉ができるだいぶ前から、知財部による会社全体への地道な活動があったとのこと。
調査分析のスキルのみではなく、そのようなソフト面での整備が必須だと分かりました。

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IPランドスケープの実践において、部門間の連携・協力は必須要件

「要約」
IPランドスケープは、ある切り口の情報分析で得られた仮説を、別の情報や別の切り口で検証するという、仮説検証サイクルに重きを置く。
事業部は事業感覚に照らし、R&D部門は技術観点で、十分な議論を重ね不足する切り口を加える。

各部門の担当者が集まり2,3か月のプロジェクトを組む。
知財部は、情報の調査・分析と全体のコントロール、そして、部門間の橋渡しを担う。

大がかりなプロジェクトが可能なのは、知財部が過去から行ってきた取り組みが功を奏している。 

「感想」
IPランドスケープは、決して知財部単独ではなく、事業部などとの連携がないと実現できないと思います。
それが仕組みとして構築できているところがすごいなと思います。

その中でも知財部はプロジェクト全体をコントロールしなければならず、プロジェクトマネジメントのスキルを高めなければいけません。

あと、その仕組みを作り上げるのに、やはり長年の関係性の構築が必要だなと分かりました。

社外専門家を招いた啓蒙活動を行い、IPランドスケープの気運を醸成

「要約」
年に一度、知財研修週間があり、この10年は知財戦略と情報活用に関する講演会を企画・開催。
たとえば、2015年:野崎篤志さん、2016,18年:山内明さん。

メリット
・豊富な経験に基づく的確な内容と聴衆を飽きさせない話術で、満足度の高いインプットを提供。
・社内からの目線では気づかない。第三者目線での知見を得ることができる。

アウトソーシングの力も借りながら手探りで実績例を積み重ねてきた中から、経営層に実効が認められた事例あり。

「感想」
IPランドスケープを進めるにあたり、社外専門家による講演を行うとは良い方法だな、と。
知財部のみで他部門に説明しても、知財部自身が初めてなのでうまく説明できないことがあります。
最初の説明が肝心なので、そこで外部の力を借りるのはありだなと思いました。

しかも、その社外専門家も選りすぐりの方々を呼んでいますね。

人工知能を活用したIPランドスケープの将来像

「要約」
世の中の膨大な情報をハンドリングし、AI解析を用いて確実性の高い将来予測を導くことを構想。

①最初に目指すのは、AIを用いた情報収集と整理、分析、評価と関連付け。
膨大な量のデータからインフォメーションとナレッジの効率的な取得と分析を行う。

②その次は、AIによる特許情報分析による知識の創出。
潜在的な技術の連関性を明らかにし、自社技術の転用できる新領域の発見などを行う。

現時点では、特許の因果関係分析による新規用途探索手法を確立。
今後は特許・非特許を組み合わせた分析に取り組む。

「感想」
特許の調査にAIを導入するというのは、いろんなベンダーも取り組んでおり、必然の流れだと思います。
その作業にかなりの工数がかかっており、AIを使いたいところです。

ただし、そのあとの分析や示唆を得るところまでAIをどの様に使えるのか、まだ未知数かなと思います。
人間による、ひらめきみたいなこともありますので。

上記の「特許の因果関係分析による新規用途探索手法」というものに大変興味があります。
どこかで公表されることを待ち望んでいます。

(まとめ)実践のために、風土や仕組みの構築が必須

昭和電工の取り組みを読んで、IPランドスケープ実践にあたって、会社全体の風土の醸成や、仕組みづくりをしっかりされているなと思いました。
専門家の講演や、他部門とのプロジェクト体制を構築したり。

ただそこまで行くのに、10年ほどの積み重ねがあったとのこと。
特許の調査結果の提供など、知財部としての実直な活動があって、少しづつ信頼を築いたとのことです。

その意味では、現在はIPランドスケープという言葉が広がり、経営層も認識しているはずです。
知財部は、その流れにのってIPランドスケープを会社に浸透させる、絶好のタイミングだと言えます。

上記内容は、『IPランドスケープの実践事例集』(技術情報協会)に寄稿されたものです。

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