リコーのIPランドスケープの取り組みの紹介です。
他部門とのコミュニケーションを円滑に進めるための工夫や、特許情報から商品利用形態をあぶり出す分析など、勉強になりました。
特に難しいことでもなく、いろんな企業で参考にできると思います。
過去事例やノウハウを情報解析メニューとして形式知化し蓄積
「要約」
IPランドスケープを実行するにあたり、依頼者自信が明確なアウトプットイメージを持っていない場合が多い。
どの様な情報解析ができるのか、情報解析で何がわかるのかという質問が多い。
そういったコミュニケーションを円滑にするため、情報解析メニューを用意。
業界、競合、協業、自社といった視点で、解析できる項目と解析事例をまとめたもの。
これをもとにして解析することで、解析結果が事業・技術戦略に有効活用されるケースが増えた。
知財部にとっても、過去事例やノウハウを情報解析メニューとして形式知化し蓄積でき、アウトプットのレベルアップにつながる。
「感想」
IPランドスケープで何ができるかはよく聞かれますね。
それに対して一言で回答しても漠然としてしまいます。
そこで、解析事例としてメニューとして整理して、具体的事例を紹介することはとても有効だと思います。
自分たちの実績が乏しい場合は、いろんな会社やコンサルで実施されているIPランドスケープの資料から持ってくるのが良いと思います。
形式知化も重要と思います。
ただ、メニューがあったらそれに沿って誰でもできるというわけではありません。
テーマによって仮説も変わり検証の仕方も変わります。
なので、そのとき何を考えてその分析を行ったのか、など、頭の中を吐き出すことが必要だと思います。
知財情報を使った協業候補企業の評価
「要約」
母集団の特許について、特許への注目度(特許の質)を縦軸とし、特許群のサイズ(特許の量)を横軸としたマップを作成。
つまり、質と量で決まる特許群の総合力をバブルの大きさで表すポジショニングマップ。
このマップにより、当該事業で開発を行っているプレーヤを把握し、その中で協業候補企業の技術力(特許力)の相対的な位置づけを明らかにした。
「感想」
特許の質と量を確認する調査ツールとしては、PatentSightが有名ですね。
簡単な操作で、きれいなマップを作成することができます。
しかもこのツールの良いところは、特許の質の値の計算方法を説明しているところです。
特許の質の話を他部門にすると、その根拠は何?とよく聞かれます。
そのときに、こういった計算方法です、と答えることが必要になります。
知財情報から新たな商品利用ニーズを探索
「要約」
商品「RICOH THETA」は360度撮影できるが、利用形態をメーカで発想するのに限界あり。
事業企画部門から、IPランドスケープでヒントを得たいと要望あり。
①母集団形成:360度画像認識をキーワード設定
②対象特許の特定:特許分類IPCで利用が想定される分類を選定
③利用形態を特定:特許を査読し利用形態を表現する用語を抽出。17件を特定し事業企画部に報告
現在、具体的な製品化が進んでいる。
なお、出願国ごとに違う利用形態が抽出され、外国特許を解析することの意義を見いだせた。
「感想」
具体的な商品について、特許から利用ニーズを探索するというもの。面白いですね。
IPCを使えば、ある程度は機械的に対象を絞れますし。
その中で特許を読んでいって、意外な利用形態を見つけたときは嬉しいですね。
国ごとに利用形態が異なると、それをもとに商品戦略や広告戦略に活かせそうです。
特許情報をマーケティングに活用する具体例で、勉強になりました。
(まとめ) IPランドスケープ実践での工夫や効率化に取り組む
上記の内容は、リコーの理事 知的財産本部 副本部長の石島尚さんの寄稿から紹介しました。
形式知化してレベルアップを図ったり、分析ツールを導入したりと、IPランドスケープ実践においての工夫や効率化の様子がよく分かりました。
BtoCプロダクトを扱う企業ならではの開発の難しさがあり、そこでのIPランドスケープの実効性も示され、勉強になりました。
上記内容は、『IPランドスケープの実践事例集』(技術情報協会)に寄稿されたものです。
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