本田技研のIPランドスケープ。標準化戦略への知財部の体制・取り組みを学ぶ。

本田技研の知財部の体制やIPランドスケープ具体例を紹介します。
特に標準化を知財部としてどう取り組むのか、そのための体制づくりも勉強になりました。
標準化戦略を取り組もうと考えている方は、本田技研を参考にするとよいと思います。

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戦略責任者に受け入れられ、アクションに繋がることで目的を果たす

「要約」
経営・事業に貢献するには、提供する情報が経営戦略の意思決定に役立たなければならない。
基本的には、競合他社、自分、市場、顧客の「現況」と「将来変化」、それに対するアクション。

経営の重要課題に対し、市場動向や技術開発動向、標準化動向と言った情報リソースを解析する。
そして、そこから得られたインテリジェンスを知財戦略とセットにして発信。

このとき、戦略提案は必ず戦略立案者に対する提案という形で提示する。
受け入れられアクションにつながることが目的。
必ず相手の判断結果を明確にし、価値ある提案であったかを検証し、次にフィードバックすることでIPランドスケープのレベルを上げる。

「感想」
知財戦略とセットにすることで、知財部としてしっかりと実行面で経営に貢献することを宣言している、のだなと。
それがないと、ただ戦略の提言であって、他人事のような感じになってしまうかなと思いました。

アクションに繋がらないと目的を果たしたことにならない、というのがレベルが高いなと。
控えめに言うと、オプションの一つの提案であって検討の土壌に上げられれば良い、というのもあると思います。
でも、そんなレベルではないんですね。
IPランドスケープにかける覚悟のようなものを感じました。

標準化部門も一体運営し、IPランドスケープによる標準化戦略を実現

「要約」
・標準化戦略を、知財戦略と並ぶ重要戦略と位置づけ、知財部が標準化部門を一体運営する。
社内の標準化関連部門や規格団体への参加状況を一元化する。誰がどんな目的で関わっているか。
技術領域別にワーキンググループを作り、実務レベルの情報共有と戦略議論を円滑に行える体制。

・標準化戦略をコアとしたIPランドスケープ
オープン領域・クローズ技術をどう設計するか。オープンクローズ戦略でどう事業拡大できるか。
この観点で議論・検討し、具体的な標準化戦略に落とし込む。

このとき知財・標準化をどんな戦略パターンとするかは、
 国内外の標準化動向
 関連する自社他社の特許保有状況
 研究開発の現状と将来見通し、技術的な強み
 現在検討しているビジネスモデル
などの情報を、IPランドスケープで整理しつつ標準化戦略を立案する。
標準化部門に他部門から関連するエキスパートに参画してもらい知見を活用する。

「感想」
一つの事業を実行する中で、昨今はいろんなプレーヤとの関係性が大事になります。
その関係性の中で自社が中心であり続けるには、標準化戦略が大事だと私も実感しています。

知財部が標準化部門を一体運営しているということで、そこまで必要なのかと驚きました。
その体制であるからこそ、標準化戦略へのIPランドスケープも実現できるのだなと。
その標準化部門に他部門のエキスパートを呼べるのも、それだけのプレゼンスがあるからだと思います。

知財部が自ら市場の新規開拓を行い、事業に直接的に貢献する

「要約」
自社の知的資産から他用途・他分野で使われる可能性があるものを積極的に見出し、事業化する。その企業とアライアンスにも取り組む。

ステップ
①自社資産を俯瞰し、技術をカテゴリごとに分ける
②そのうち異業種への引用数などで転用可能性を推測
③その技術について、自社での位置づけ、開発状況、将来の自社内の技術ポジション、商品化の可能性を調査。開発部門と協議し、アライアンス先を探すフェーズに移行するか判断
アライアンスは特許ライセンスの他、技術供与もあり。大企業からベンチャーまで広く対象。

「感想」
自社あまり使っていない特許を、他社と協業して事業化に持っていくというものですね。
理論的には可能だなとは思っていましたが、知財部が主体で実施しているのが面白いですね。
確かに、転用可能性を発掘する手段として異業種への被引用を調べると言うのは、特許情報分析の腕の見せ所だと思います。

ステップの後半では開発部門との協議や技術供与などがあり、そういった他部門と一体として活動できるのは経営層から期待されている証左だと感じました。

(まとめ)本田技研の知財体制やIPランドスケープを詳細に学べた

上記内容は、本田技研工業の本間悟司さんの寄稿から紹介しました。
本田というと、知財部長をされていた久慈直登さんの書籍があります。
ただし、その書籍よりも詳細に、知財部の体制やIPランドスケープの内容が書かれています。

特に勉強になったのは、標準化部門を知財部が運営し全社の標準化活動をマネジメントしている点、そして、知財が主体となって新しい事業を発掘している点です。

私の勤めている会社には足りていないところであり、実現の上で参考にしたいと思います。

上記内容は、『IPランドスケープの実践事例集』(技術情報協会)に寄稿されたものです。

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