キヤノンの知財活動を紹介。企業知財部員がよく悩むことへの回答を得る。

キャノンの知財活動の取り組みが分かる記事がありましたので、紹介します。
著者は、 キャノンの知的財産法務本部長を務める長澤さんです。
企業知財部員が現場で直面する悩みについて、クリアに述べられています。
引用した書籍は、『IPランドスケープの実践事例集』(技術情報協会)となります。

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論文を読むより特許を読め

「要約」
・技術論文
技術者の技術に対する思いを反映させた文章。
いかに画期的であり、いかに世の中に貢献できるか、わくわくさせる表現で書く。

・特許公報
出願権利化のコストや社内リソースがかける時間が必要。
会社の事業化の狙いや、将来の投資の方向性を示す。
研究開発戦略や事業戦略を立てる上では、技術論文より役に立つ。

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「感想」
情報分析において、論文と特許との扱い方がよく分かりました。
確かに内容としても、論文として書くにはある程度の研究が必要ですが、特許ではもっと概念的なアイデアでも可能です。
そのアイデアですら時間もコストも書けて出願するわけです。
そうすると、その出願企業の事業の狙いを調べるのにふさわしいと思いました。

競合企業ごとに特許マップの俯瞰図を作り、研究開発戦略に反映

「要約」
広い範囲で特許を解析すると、基本特許を持つ会社が複数存在することがある。
長期的かつ具体的な示唆につなげなければならない。

そのためには、全体の特許を俯瞰できる資料を作成する。
どこの権利者がどの分野に投資しているかを解析する。
それら権利者の中で近い将来に係争になる可能性が高い企業を優先順位付けし、大まかな交渉戦略を立案。
その会社ごとに特許マップの俯瞰図を作り、自社の開発に反映する。

・・・・・
「感想」
分析をしていて、特許がたくさんあり過ぎて、何に着目してよいか迷うことがあります。
一方、特許情報の良いところは、定量的に扱うことで、全体を俯瞰できるところだと思います。
特許全体を見つつ、その中で企業ごとに特徴をあぶり出す。
そこが特許情報の最大の利点だと感じています。

競合他社がその技術に到達できる期間を予見する

「要約」
出願公開されたら、その技術内容は一瞬で世界中に伝わる。
もし侵害発見できない特許権では、開発費を投じた分、コスト競争に敗北するリスクあり。

一方で、出願しないことで他社に先に出願されて独占を許すリスクもあり。
公開前に実施していれば先使用権の活用を考えるが、その制度のない国もある。

ここで知財部は、経営に関与できる大きなチャンスがある。
競合他社がその技術に到達できる期間を予見することが必要。
他社の特許ポートフォリオを調べ、さらにソフトウェアではオープンソースのレベルも知ったうえで、出願判断が求められる。

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「感想」
ソフトウェア技術が進展する中、どうしても侵害発見が難しい特許が生まれます。
その場合、本当にこれを出願してよいのか、判断に困ります。

それに対する一つの回答は、競合企業や世の中の技術レベルがどこにあるのか。
それらが自社の技術に追いつきそうであれば、出願をすべきである、と。

私の悩みが1つ、クリアにできました。

知財部門の責任者は、経営に対するアドバイスを躊躇なく行うこと

「要約」
IoT、AIなど新しい技術が発展し、データの取り扱いも問題となる。
IPランドスケープにかかる知財活動はさらに多岐に及ぶ。
これからの管理職は、技術、経済、販売まで多くの知見を持たなければならない。
調査すべき技術、ビジネス、企業、投資、優先順位などを的確に判断することが必要。
そして、知財部の責任者は、経営に対するアドバイスや指摘を躊躇なく行うことが必要。

(まとめ) 知財に対する取り組みが先駆的な企業だと、改めて実感

著者はキャノンの知的財産法務本部長を務める、長澤さんです。
キャノンと言えば、ゼロックスのコピー機の特許網に立ち向かったことで有名です。

上記の取り組みは、長澤さんが入社したころが実行しているとのこと。
知財に対する取り組みが先駆的な企業だと、改めて感じました。

論文と特許の扱いの違いや、侵害発見が困難な場合の出願判断など、企業知財部員が現場で直面する悩みについて、きれいに回答いただいていると思いました。

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